困惑

10/13
前へ
/118ページ
次へ
家に帰り、 お母さんに打ち合わせの件を話したら、すぐにお父さんに確認してくれた。 お父さんは、今月の土日いつでもOKだそうで、 お母さんも、あちらの都合に合わせますと、本当に大歓迎してくれている。 私のことを一番に考えてくれて、もちろん私の立場も考え、適切な判断をしてくれる、そんな両親に心から感謝している。 潤さんと出会って、結婚することになって、両親の思いや、今まで気づかなかったことが、たくさん見えてきた。 昼休みに潤さんに、"そちらの都合の良い日に合わせます"と連絡した。 "了解!"と、潤さんからの返信は夕方だった。 相変わらず忙しいんじゃないのかな? 頑張り屋さんだな、潤さん。 にっこり笑ってスマホをしまった。 幸せな気持ちのまま会社を出たところで、綾さんが待っていた。 「美緒さん!ちょっと時間、いい?」 「はい、…。」 綾さんに連れられ、近くのカフェに入った。 綾さんはすぐに話そうとせず、お互いに沈黙が続いた。 何か喋るべきかとも思ったが、綾さんの言葉を待った。 「美緒さん、私ね、潤が好きだった。 ううん、今も好きなの。 でもね、いとこだから無理かなって諦めてた。 だけど、いとこでも結婚できるし何の問題も無いの、本当は。 私、あなたが羨ましいわ、後から来たあなたに潤を持って行かれるなんて…、 私の方があなたなんかよりずっと、潤のこと好きだから! 負けない、認めないから!小さい頃から潤だけを見てきたのよ、 あなたになんか渡さないから。」 急に激しい口調で、綾さんは喋り続けた。 「綾さん!聞いてください。 潤さんを好きなのは分かります。 素敵な人ですから、好きになって当然だと思います。 でも、私も潤さんを誰よりも愛しています。 潤さんも同じ気持ちでいてくれていると思っています。 だから私も、譲れないんです!綾さんにも他の誰にも。 私、綾さんに謝ったり、諦めて欲しいとも言いません。 私も潤さんも、お互いを選んだんです。 だから、私はそんな自分を信じます。 偉そうなこと言ってすみません。 では、失礼します。」 深くお辞儀をし、伝票を持ってその場を立ち去った。 綾さんは座ったまま、声も出さずに泣いていた。
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2119人が本棚に入れています
本棚に追加