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潤さんの父親の三上和人氏は、建築家であり大学でも建築学を教えている偉い先生だという、
私も全く知らない事実があったわけだ。
こちらは普通過ぎて申し訳ないと父が言っているが、私はそうは思わない。
「お父さん、私はお父さんのこと誤解して最近まで良い親子関係ではなかった。
だけど、今は違うよ。
血が繋がらない子供の私にも、亜里沙と分け隔てなく大学まで行かせてもらった。
当たり前なんかじゃないよ、こんなに大事に育てて貰ったんだから。
結婚だって、こんなに喜んで緊張して、お父さんは…、お父さんはすごい人だよ!
もう本当の親だと思ってるよ、私。」
「美緒っ!」
私の名前を呼んだきり何も言わない父を、不審に思ってよく見たら、
お父さん、泣いてる?
「お父さん、泣いてんのー!」
亜里沙が揶揄うと、お父さんは
「うるさいっ、亜里沙!
美緒が優し過ぎるから、泣けるんだっ。
亜里沙、おまえも見習いなさいっ。」
「げっ、なんで私?」
亜里沙の様子がおかしくなり、みんなで笑った。
こんなふうに家族が仲良くなれるなんて、夢みたいだった。
以前の私に言ってやりたい。
自分自身が素直な気持ちになって、相手に接してごらんって。
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