ふたり

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朝から泣いたり笑ったり忙しい私達家族も、やっと料亭に到着した。 落ち着いた雰囲気の料亭で、三上家の皆さんに出迎えられた。 通された座敷も素晴らしかった。 お父さんが心配だったが、いざとなったら頼りになるお父さんだった。 潤さんのご両親に紹介され、私達家族も紹介が済んで雑談を始めたとき、お父さんは建築に興味があったのか、勉強してきたのか?その会話の質の高さに、潤さんのお父さんを驚かせていた。 母親同士も意気投合したようで、会話は弾んだ。 潤さんのお母さんとは、山田のおばあちゃんの話しで盛り上がった。 潤さんも嬉しそうだし、亜里沙も満面の笑みで料理を堪能している。 しばらくして、美しい庭園があるというので、みんなで散歩に出た。 大きな石が並び、池には錦鯉が優雅に泳いでいる。 お父さんと潤さんのお母さんと亜里沙が錦鯉にエサを与えて、笑い声をあげていた。 それを遠目に眺めながら、お互いの子どもの幼い頃の話しをしていた。 その時、母が静かに話し始めた。 「もう、知ってらっしゃると思いますが、美緒は私の連れ子なんです。」 「ええ、聞いています。 でも、実の親子のように仲が良いですね。 本当に、みなさん楽しそうで。」 潤さんのお父さんが、そう言ってくれた。 「美緒の本当の父親は、この子が生まれる前に海外で事故に遭って、亡くなったんです。」 「そうでしたか、私も何十年も前に海外で事故に遭って、危うく命を落としかけたことがあるんです。そうでしたか、それは辛い目に遭われましたね。」 「ええ、私、本当は彼の後を追って死のうと思ったんです。 でもその時、妊娠していることが判って、生きなきゃって思ったんです。 この子を立派に育て上げるのが、彼への愛情の証しだと思ったんです。 だから、必死で頑張って来ました。」 「女性は強いですね、素晴らしいお母様だ。 こんなに聡明で、心根の優しいお嬢さんは、なかなかいません。 潤には過ぎたお嬢さんだと思っています。 潤が美緒さんにベタ惚れなのも納得ですよ。 お母様も寂しくなると思いますが、嫁として大切にさせて頂きますから、安心してください。 末永く宜しくお願いします。」 「こちらこそ、宜しくお願いします。 美緒がお嫁に行っても、まだウチには大変なのがいますから、寂しくはないですよ。 亜里沙が、お嫁に行くのはまだまだ先の話しですから。 まぁ、その後は夫婦水入らずで楽しみます。」 そう言って、母は晴れ晴れとした顔で笑っていた。
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