ふたり

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その後、私達は大忙しだ。 まず潤さんが、大粒のダイヤが眩しいぐらいにキラキラと輝く指輪を、私にくれた。 本当に遅くなってゴメンなさいと言って、私の指にはめてくれた。 その、すまなそうな顔が"可愛かった"と思ったが、潤さんには内緒にしておこう。 悠理には、一番に報告して指輪を自慢しておいた。 山田のおばあちゃんにも報告済み。 早希ちゃんも喜んでくれたし、吉岡も渋い顔で祝ってくれた。 式場選び、式の打ち合わせ、衣装選び、 招待客への案内、新婚旅行など、 決めることがいっぱいだったけど、 忙しくも楽しい毎日だ。 結婚式も間近に迫ったある日、 母が一枚の写真を出して来た。 実の父親の写真だ、 ずっと仕舞っていたらしい。 私が嫁ぐ時に持たせようと思っていたそうだ。 「だって、私にはお父さんがいるからね、 ああ見えてヤキモチ妬きなのよ、あの人。 だから、美緒に託すわ、」 母が言った、 「私が命がけで愛した人。」 父の写真、 眩しいぐらいの笑顔を投げかけている、これを撮ったのは母なんだろうか? 体格の良い人なのが分かる、日焼けした顔に真っ白な歯を見せて笑っている。 まるで、何かのCMみたいに整った顔だちの人だった。 もし生きていたら、どんなお父さんだっただろうな? ありがとう、お父さん、 私をこの世に送り出してくれて、 潤さんと幸せな家庭を築いていきます。 見守っていてください、お父さん、 私は父の写真を抱きしめた。
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