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家族
家に帰り、急いで出勤の準備をする。
妹の亜里沙は、まだ寝ているようだった。
最近、亜里沙の帰りが遅くて両親が心配している。
怒った父は、亜里沙が帰るまで、
寝ずに待っていることもある。
そんな父を、溜め息混じりで母は諌める。
私の母は、私が中学生の頃に父と再婚した。
だから、私は父とも、亜里沙とも血の繋がりが無い。
私が中学一年、亜里沙は小学2年だった。
まだ小さい亜里沙は、新しい母と姉が出来て大喜びしていたが、
思春期にさしかかっていた私は、
新しい父に馴染めず、母を困らせていた。
私の実の父親は、私が生まれる前に亡くなっている。
いや、それ以前に、
私の誕生を知ることなく、亡くなったそうだ。
若い頃、モデルをしていた母は、カメラマンだった父と撮影現場で知り合った。
母との交際は順調で、
やがて母と婚約した父は、
結婚前の一人旅と言って、
単身で海外へ撮影旅行に向かったそうだ。
そして、渡航先で不慮の事故に遭い、
帰らぬ人となった。
その直後、妊娠を知った母がどんな気持ちだっただろうかなど、
今の私には想像もつかないが、
おそらく、ただならぬ覚悟で私を産む決意をしたに違いないだろう。
そして、母は私をひとりで産み育ててくれた。
本当の意味で、たったひとりの親だ。
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