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その母が結婚すると言ったとき。
正直なところ、
私にとって考えたくもない話題だった。
それは、どこか母が遠くに行ってしまうような、そんな気がしてならなかったからだ。
しかし、これ以上、
私が母を縛りつけてはいけないのではないか、と思ったのも事実だった。
シングルマザーとして、私を育てて行くのには、体力的にも金銭的にも大変だったのは間違いなかった。
私がいなければもっと早くに、気立ても良く
美しい母は、幸せになれたはずだもの。
そんな母の幸せを、私が奪って良いわけがないんだ。
そして私は、母の再婚を承諾した。
新しい父は、真面目で温厚な人だと思った。
外見は、普通の中年男性、
可もなく不可もなくと言ったところだが、
私にも色々と気を遣ってくれていた。
妹の亜里沙は、小さくて可愛かった。
妹ができたのは予想外に嬉しくて、
私は亜里沙を可愛がって、何処へ行くのも一緒に連れて行った。
亜里沙も私に懐いてくれて、
一緒に本を読んだり、ゲームをしたりした。
それでも、異性と暮らすのが初めての私には、義父との日常生活は、双方にとってストレスだったと思う。
母がいて、父がいて、妹もいて、
幸せな家庭の出来上がりだと思っていた。
でも、そんなに簡単なものじゃなかった。
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