家族

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あれは、私が大学3年生、 亜里沙が高校に入学した頃だった。 両親は亜里沙の為に、家庭教師を雇った。 家庭教師は、美緒と同大学の男子学生だった。 真面目そうな好青年で、亜里沙が彼に惹かれていることに、やがて私は気づいた。 それでも、懸命に努力して成績をあげようと努力していた亜里沙を、何も言わずに温かく見守っていた。 その年の夏、 亜里沙は彼に熱を上げ、初めての恋に舞い上がっていたようだ。 やがて、彼のアパートに押し掛けるまでになっていた。 ただ、彼からすれば16歳の女子高生に対して、 何の恋愛感情も無かった。 亜里沙も、そのうちに諦めて同世代の彼を作るだろう。 はしかみたいな恋だと、 ただそれだけのことだと、簡単に思っていた。 しかし、亜里沙の彼への執着は一層強くなり、 ついに恐怖すら感じた彼は、家庭教師を辞めてしまった。 それでも諦めきれない亜里沙は、彼を大学前で待ち伏せていたという。 それを見た彼は、亜里沙に言った。 「もう、いい加減にしてくれないか? 俺は君に何の興味もないんだ。 最初は大学で、あの美緒さんの妹だって聞いたから興味を持った。 だけど、美緒さんにいつも会えるわけじゃないし、こんなにつき纏われて迷惑なんだ! それに君、美緒さんと血が繋がってないんだろ? どおりで似てないと思った。 もう勘弁してよ、美緒さんならともかく、 君とはこれ以上関わりたく無い! これ以上つき纏うなら、ストーカーで訴えるよ。」 そう彼は、妹に冷たく言い放ったそうだ。 甘やかされて育った妹には、さぞ辛い出来事だったと思う。 だがそれ以来、 亜里沙の怒りの矛先は、 彼ではなく義姉の私に向かった。
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