家族

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亜里沙は、私に対してコンプレックスを持っているようだ。 私の母はモデルをしていただけあって、 40代後半になった今でも、その容姿は美しいと思う。 私自身は身長は高いけど、モデルなんてとんでもない、と思っている。 亡くなった父の写真を見たことがある。 男性として申し分無い容姿だったと子供心に思ったのを覚えている。 私はどちらに似ているのだろう? 高い身長は両親ともだ。 顔は父ににているのか? 和風美人の母の顔とは違う気がする。 学生時代はエキゾチックな顔立ちと、 言われているのが恥ずかしくて、 周囲から浮いている自分が嫌だった。 また、大人びた顔立ちが、 冷たく見えるのも気に入らなかった。 対照的に亜里沙は、 写真で見た彼女の亡くなった母親に似ていた。 ふっくらとした丸顔が可愛らしく、 私には無い愛くるしさがある。 何よりも、まだ高校生なんだから幼さは仕方ない。 当然ながら、美しさは日毎に増していくことだろうと思うのだが。 大学での一部始終は、友人の悠里から聞いたが、亜里沙はあれ以来、私とあまり会話をしなくなった。 同じ家に住みながら、 話しかけなければ、知らぬ顔で通り過ぎて行く。 一度は真相を話したいと試みたが、亜里沙に拒絶された。 今は、そっとしておこう。 しばらくすれば、 元どおりになると思っていた私は、 亜里沙に言い訳ひとつせず、 彼女が落ち着くのを待っていた。
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