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そんな俺も結婚をし子どもまで設けたが今だに、かき氷が食べられなかった。
「かき氷食べると頭悪くなるんだぞ」
「あははは、パパのウソつき」
そう言って我が子が喜んでいる様子を見てようやく分かった。
父は俺を喜ばせようとして付いた嘘なのだと。
そんな父も等々最後の時を迎えようとしていた。
明るく愉快で嘘つきな父は、病室で何時もの様に明るく答えた。
「よう!元気してたか?わしはこの通りピンピンしてらぁ」
病室で元気な患者など見たことが無いと言いたかったが、それを毎回の様に言って来た父を見ると何故か安心した。
父は癌だった。
ゆっくりと会う度にやせ細っていく様を見るのは辛かった。
しかし、見舞いに行く度に明るく何時ものように振る舞う姿を見ると、その父親としての力強さのようなものを見習わないとと思うようになっていた。
しかし、最後の最後はやはり痛みと苦しみで会えない日も増えていき、門前払いを受ける日々が続いた。
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