3.evening

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 「いや、ゲームでは…」頭が痛くなってきた。この姿では話もまともに聞いてもらえないらしい。  老人に玉砕するわたしを見かねてか、幼女誘拐の疑惑をかけられているマークが口を開いた。「彼女は僕の同僚なんですって。彼女は僕の先輩で、今回パシフィカには企業訪問で─」  老人は言葉を遮り、ひどい剣幕を作った。  「そんなことが信じられると思うのか?どう見ても子どもじゃないか!エレメンタリースクールにも通っていないほどにも見える!それが同僚?しかも歳上だって?パシフィカ(あそこ)には企業なんてものはないし、お前さんの言っていることはどれも嘘っぱちじゃないか!?」  「いや違…何でそうなるんですか」マークも一瞬の内に粉砕された。  「わたしはもういい大人なんですよ!小学校なんて随分昔に卒業しましたし、彼の言ってることは本当なんですよ」  懸命にそう訴えたわたしに、老人は気圧されたように眉を下げた。ようやく通じたか、と胸を撫で下ろし─。  「…もしや、洗脳とかいうやつか…?」  何でそうなるんだよ!わたしは癇癪を起こしそうになる。  「テレビで見たことがあるんだ。洗脳というのは怖いんだろ?あることないこと吹き込んで思い込ませるんだ。ああ、可哀想に!だがもう大丈夫だ!俺が見つけてあげたのだからね。とにかく、病院に行こう」  病院?どこからそういう話になったのか。マークも動揺したのか声を上げた。「え!スタンフォード大学に行くんじゃ…ちょっと待ってください。洗脳じゃないし」  「うるさい!お前は警察だ!覚悟しておけよ」  渡りに船と思って飛び乗ったが、とんだ車に乗ってしまったらしい。どうにか信用してもらおうとわたしは必死に考えた。そこで思い出す。名刺代わりのあれが使えるんじゃないか。  「ジャックさん、わたしの頭の上に文字とか見えませんか?PMMnet.でほらこう、名前とかが、わたしの」  するとジャックはぶつぶつと言い出した。「PMM?…ああ、あの若者達がやってるあれか。あれは頭の中に入れるんだったか。全く、最近の若いもんは何を考えているのか。親から貰った身体を…」  そこまで言って、さっとジャックの顔が青くなった。嫌な予感しかしない。  「まさか…お嬢さん、お前さんも…」  「えとー…あの、ジャックさん?」
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