12人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ
「ごめんね、お邪魔虫だよね私」楓が不気味なにやけ顔を晒しながら注文したコーヒーをちゅうちゅうと吸った。
「虫?…カエデさんは虫なのですか?」
マークもカップに入ったコーヒーを飲む。若干不服そうに飲む。スタバではないからか。
大学構内に設けられているカフェに来ていた。見慣れない店名だったが、学生が集まっていて若々しいエネルギーに満ちているように見える。
そんなこと言ったら、このあが一番若いと思うけど。楓がそう茶化してくるから、うるさいと自分の分の紅茶を啜った。砂糖の甘みが舌に纏わりつく。
「虫ではないよ。…いや、強ち間違いでもないか」
砂糖をこびりつかせたままわたしは口を動かした。店員が気を利かせて砂糖を入れてくれたらしいけど、残念ながらわたしは無糖の方が好みだった。こんな容姿をしているためか、コーヒーは駄目だと言われた。
「ちょっと酷くない?それどういう意味?」スタンダードな返しをしてきたかと思ったら、虫を何だと思ってるわけ、と続けてきたため、返答に困ってしまった。
マークも困惑の表情を浮かべていたから、わたしは咳払いをする。「邪魔者とか余計な人って言いたかったんだと思う」
「邪魔者…なら三番目の車輪かな」
「三番目の車輪?そんな言い方なんだ?」楓は素直に関心の声を上げている。
「ですね。除け者とか…で、カエデさんは除け者なんですか?」
「ええー?またまたー」楓がよく分からない合いの手を入れてくる。何が“またまたー”なのか。
わたしは溜め息を吐く。「楓はわたしとあなたがカップルだと思っているらしいよ」
「カップル?僕とコノアさんが?」きょとんとしたマークが確認してくる。
「もー隠さなくてもいいのにー」楓は口を尖らせながらにたつくという離れ業を見せてきた。彼女の頭の中はピンク色らしい。くねくねとした動きが同級生として全くもって気持ち悪い。
その印象を率直に口にすると楓が馬鹿笑いを上げる。「辛辣だなぁもう。それで?今日は何しに来たの?」
ようやく本題に入れるのか。わたしは甘ったるい紅茶をテーブルに置いて身を乗り出した。
最初のコメントを投稿しよう!