きっともう、こわくない。

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きっともう、こわくない。

「どうしよう、卵もうちょっとしか残ってないや……」  キッチンにて。冷蔵庫を覗いて、青年――日下部理音(くさかべりおん)は呟いた。イラストレーターをやっている彼は、姿勢が悪いのか若干猫背気味で、同時にスポーツをやっていたのかと疑いたくなるくらいには背が高い。身長160cmに満たない私は、いつもだいぶ首を傾けることになる。 「卵なら、スーパーで売ってるんじゃないのか?」 「うん、まあそうなんだけどね……」  今日も今日とて彼の長身を見上げながら正論を言えば、理音は困ったように頭を掻いた。やっぱり、と私は思う。彼はスーパーに行きたくないのだ。あんなに美味しい卵焼きが作れるし、他の料理だってその気になればかなり手際よくこなせるというのに。  その理由を色々想像し、推理し、私はまた同じ結論に辿り着くのである。 ――どうすれば、理音の役に立てるんだろうか……。
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