第三話 若の告白

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「あ、でも若にお伝えしねぇと」 「あぁ~そうでしたね。こういう仕事の時は、必ず春華に伝えるのが貴方達二人のルールでしたね」 「はい……じゃねぇと無茶苦茶怒られるんで。まぁ怒った顔も可愛いんですけど」 「分かります!!逆に怒らせたくなりますよね!!特にあのぷくっと膨れた頬が……コホンッ。すみません」 「いえ。俺もいつも心の中はそんな感じなんで」 組長を見ていると、俺がどれだけ若に溺愛してるか実感してしまう。 こりゃ、西國に注意されるわけだな。 「まぁあの子は私に似て、独占欲が強いですからね。自分の大切なものが他人に傷つけられる事が許せないのでしょう」 「ははっ、まさかその大切なものって、俺の事ですか?」 「そうですよ?」 「そう……なんでしょうかね。最近若にとって俺は、本当に大事な存在なのかよく分かりません」 確かに昔は、俺を大事な人だと思ってくれていたかもしれない。 だが今は? 俺はあの南雲とかいう奴よりも、大事な存在なのだろうか? いや、そんなの関係ない。 俺が若を大事にすればいいだけの話……なんだ。若が俺をどう思っていたって関係ない……事なんだ。 でも、俺も少しは若に……。 「あぁあクソッ!!頭の中がぐちゃぐちゃしやがる!!」 「これはこれは……随分と面倒なことになっているようですね」 「す、すみません組長!!急に大声上げたりして!!」 「いえ、気にしなくて大丈夫ですよ。それよりも春華なら多分部屋にいるでしょうから、今のうちに報告してきてはどうでしょうか?」 「そう、ですね……分かりました。では失礼します」 俺は組長に頭を下げ、襖を静かに閉めた。 この廊下を真っ直ぐ歩き。その後右に曲がってまたまっすぐ歩けば、そこに若の部屋がある。 若が中学生になった頃だったか、部屋にはなるべく近づかないでほしいと言われ。それからあまり通らなくなった廊下の道。久々にその道を歩くと、なんとなく少しばかり緊張が走る。 「というか。静かすぎないか?ここ」 どうやら『部屋に近づくな』という警告は、他の奴等にも言い聞かせていたのだろう。 若の部屋の前まで来ると、周りには人の気配が全くない。この組の人間は少なくとも十数人はいるはずなのに。 ーーそこまでして部屋に近づかせたくない理由でもあるのだろうか?
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