第一話 若のお世話係

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「秋虎、顔が少し赤いよ」 「え!?そ、そうですか?」 若の綺麗な顔が、覗き込むようにして俺に近づく。 その距離は目と鼻の先。 俺の唇に、若の吐息がかかるほどだ。 きっと俺がこのままこの前に倒れれば、お互いの唇が重なって……。 「(って。いやいや、何を考えているんだ俺は!!こんな天使を汚すような考えしやがって!!阿保か!!)」 いくら若を溺愛しているからといっても、それは息子のように愛しているわけであって、決してそういうことをしたいというわけでは。 「ねぇ秋虎。今日僕が告白されてるのを見てどう思った?」 若の唐突な質問に、心臓が大きく高鳴る。 「え……どう、とは」 「どんな気持ちだったかって聞いてるんだよ」 まるで、俺の心の中を見透かしているような眼。 俺はあの時、若が告白されている現場を見てどう思った? イライラ。ムカムカ。もやもや。言葉にするには難しい感情ばかり。 一体どう答えれば正解なんだ。 「俺は……えっとですね。あ!若に手を出すなんて百年早い!と思いました」 「あ、そう」 これは失敗した。明らかに不服そうだ。 じゃあ一体若は俺に何と言って欲しかったんだろうか? こんな時、つくづく自分が馬鹿じゃなければと思ってくる。そしたらきっと若を怒らせることもないはずなのに……。 悔しいが。こういう時、察しのいい西國が少し羨ましくも思ってしまう。 「ねぇ秋虎。言いたいことがあるんだけど」 未だ俯いたままの若から、改まって言われた言葉に緊張感だけが漂ってくる。 「な、なんでしょうか?」 何故だろうか。不安で鼓動がどんどん早まる。聞きたくないと思ってしまう。 聞いてしまえばきっと、俺にとって最悪な事が起きるーーそんな予感がした。 「僕、好きな人が出来たから」 「……え」 そして、予感は的中した。
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