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「えー!? 彼氏ができた?」
翌日、普段通り真裕たちと下校していた紗愛蘭は、彼らに暁と恋人同士になったことを報告。夕方ながら真っ暗闇と化した空に、一様に驚く三人の乙女の声が響く。
「相手は誰!? あの優しそうな顔をした後輩の子?」
「そうそう。……ってあれ? 京子に話してたっけ?」
いの一番に食い付いてきたのは京子だ。近頃の紗愛蘭の雰囲気から何かあると勘付いていた彼女は、秘密裏に情報収集を行っていた。もちろん暁の存在も耳に入っている。二人の関係が良好なことから、いずれ恋仲になるだろうと確信していた。
「おめでとう、……って言えば良いのかな? 紗愛蘭はその子をずっと好きだったの?」
「ずっと……なのかな? けど中学の頃から仲は良かったし、言われてみればずっと好きだったのかもしれないね。ふふっ……」
祥の質問に紗愛蘭がはにかみながら答える。その幸せそうな様子に、他の三人は心が洗われていくような気分になる。続けて真裕が祝福の言葉を送った。
「紗愛蘭ちゃんの想いが実ったってことだね。末永くお幸せに」
「ありがとう。……でもそれって、結婚の時に言う台詞じゃない?」
「あ、そっか。ちょっと気が早かったね」
苦笑いを浮かべる真裕。そういう問題なのかと疑問に思う祥と京子だったが、突っ込むのも面倒なので紗愛蘭と一緒になって和やかな笑みを零す。
「けどひょっとして、これからはあんまり私たちと帰れなくなる?」
「うーん……。それはどうかなあ。暁君は部活に入ってないし、ほとんど時間が合わないから一緒に帰ることは少ないと思うよ。それに私としては、部活も皆との関係も大事にしたいからね」
彼氏ができたからと言っても、他のことは今までと同じようにやっていきたい。野球部に関することは特にその気持ちが強く、願わくは相乗効果が生まれればとも思っている。要するにどちらも頑張りたいということだ。
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