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こうして各々のクラスは一通り確認できた。私たちは靴を履き替えて教室へと向かう。
「よいしょっと」
二年一組と表記された教室に入り、私は自分の席に荷物を降ろす。紗愛蘭ちゃんとは若干距離が離れていた。新しいクラスは楽しみな反面、その雰囲気に馴染めるかどうかの不安はある。
「おお、柳瀬も一組なのか」
「へ?」
すると背後から、親しみのある声の男の子が話しかけてきた。私は咄嗟に振り返り、彼と視線を交わす。
一八〇センチに迫る身長と、学生服がはち切れそうなほどに鍛え上げられた逞しい上半身。スポーツマンとしては理想的な体型をしている。
椎葉丈君。男子野球部のエースピッチャーである。高校入学の時点で既に一四〇キロを投げるほどの実力を持っていた彼は、一年生から主力として活躍。甲子園への出場、更にはその先の日本一を目指して日々奮闘し続けている。私とは入部当初に行われた交流試合で投げ合い、以後はライバルとして切磋琢磨する仲となった。といっても一方的に私が思っているだけなのかもしれないが。
「椎葉君も同じなの? ふふっ、これは楽しくなりそう。一年間よろしく」
「お、おお……。よろしくな」
椎葉君はうっすらと口元を弛ませ、左手の薬指で頬を掻く。マウンドにいる時や普段の私生活では寡黙で威厳のあるオーラを纏っている彼だが、時折こうしてあどけなく相好を崩すことがある。この雄雄しさと可愛さのギャップが、個人的に好きだ。
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