202人が本棚に入れています
本棚に追加
/1245ページ
始業式など諸々の予定を終え、放課後となった。私たちは再びユニフォームに袖を通し、部活動に勤しむ。
「次、スライダー行きます!」
私のポジションは、椎葉君やお兄ちゃんと同じピッチャー。一応このチームでは一番手に位置付けている。現在はブルペンに入り、投球練習を行っている最中だ。
グラブを大きく振りかぶり、左足を上げる。そこから臀部を軸に着地した後、下半身に込めた力を上半身に押し上げて一気に右腕を振る。指先から放たれた白球は勢い良く直進し、ホームベースの手前で鋭く横に曲がった。
「ナイスボール」
キャッチャーミットから快い音が響き渡る。この瞬間が堪らなく爽快で、私がピッチャーに焦がれる理由の一つである。
「おー、清々しい投げっぷりだなあ。見てるこっちまで気持ち良くなってきますよ」
そんな私のピッチングをずっと眺めていた人がいたようで、唐突に誰かの呟き声が聞こえてきた。気になって確認してみると、ブルペン横の階段を登った先で座っていた一人の女の子と目が合う。
新たな出会いの予感がした。
See you next base……
最初のコメントを投稿しよう!