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「終わりました」
春歌ちゃんが部室から出てくる。制服からユニフォーム姿に変わったことで、胸筋や腹筋の張りがより目立つようになった。
「春歌ちゃん、様になってるねえ。やっぱり男子の中に入って野球をやってただけことはあるよ」
「そ、そうですかね?」
「うん。あ、でもこういう言い方しちゃうと、まるで春歌ちゃんが男っぽいみたいだね。心配しないで。春歌ちゃんはすっごく可愛い女の子だから。絶対モテ……」
「は? それ本気で言ってます?」
「え……?」
急に春歌ちゃんの顔つきが険しくなった。私の言葉は瞬時に遮られ、二人の間に白けた空気が流れる。しまった。態々男の子っぽいなんて表現を出すべきではなかった。
「……あ、ごめんなさい。びっくりして変な声出ちゃいました。モテるかどうかは分かんないですけど、先輩から可愛いって言ってもらえるのは嬉しいです。ふふっ」
春歌ちゃんは我に返ったかのように、朗らかな笑顔を見せる。しかしどこか曇っていた。やはり私の軽率な一言が癪に障ったのだろう。
「そ、そっか。なら良かった」
だが更なる弁解は却って墓穴を掘るだけだ。私は気を取り直し、春歌ちゃんと共に歩き出す。気色悪い寒気が背筋をなぞってきたが、微々たるものだと気付かない振りをした。
See you next base……
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