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「じゃあ春歌ちゃん、適当にウォームアップしてから守備に入ろっか」
「はい。お願いします」
グラウンドでは未だにバッティング練習が続いていた。私たちは準備体操をした後、それぞれのグラブを左手に嵌め、グラウンドの脇でキャッチボールを始める。
「行きます」
最初は軽く投げていた春歌ちゃんだったが、塁間程度まで離れたところでギアチェンジ。腕を振って力強い球を放ってくる。
「ナイスボール」
綺麗な縦回転のかかった伸びのある投球が、何度も私のグラブに突き刺さる。間違いなく投手をやっている人間の球筋だ。これが野手の場合、捕球体勢や距離の違いで投げ方を常に変える習慣がついているため、回転軸が一定にならないことが多い。
「どう? 大分体は温まった?」
「はい。大丈夫です」
「よし。なら私と守備に入ってもらおっかな。投手をやらない時はどこ守ってたの?」
「基本的にライトですかね。一応外野は一通りできます」
「そかそか。じゃあライトで良いかな」
打者が交代するタイミングを見計らい、私と春歌ちゃんは一緒にライトのポジションに駆けていく。先ほどまでは紗愛蘭ちゃんが一人で守っていたみたいだ。
「お、真裕……と、新入生の子かな?」
「こんにちは。沓沢春歌です。これからこの野球部にお世話になりたいと思いますので、よろしくお願いします」
「はい、よろしく。私は踽々莉紗愛蘭。真裕とは同じクラスだよ」
「紗愛蘭ちゃんはうちの一番バッターなんだよ。この前の大会でもたくさんヒットを打って、大活躍だったんだ」
「止めてよ真裕。後輩の前だからってそんな無理に持ち上げなくて良いから。しかも別に大活躍なんてしてないよ」
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