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紗愛蘭ちゃんはうっすらと頬を赤らめて首を振る。けれども春の大会では全ての試合で複数安打を記録し、打率は五割を悠に超えていた。紗愛蘭ちゃんとしてはもっと上を目指したいという思いもあるのだろうが、これを大活躍と言わずに何と表現し得ようか。
「ふふっ。何だかお二人、凄く仲良さそうですね。話してる雰囲気から伝わってきます」
「そうかな? えへへ、羨ましいでしょう」
春歌ちゃんの言葉に、私は思わず得意気な顔になる。
「はい。私もこういう人と出会えると良いなあ」
「春歌ちゃんなら大丈夫だよ。ね、紗愛蘭ちゃん」
「そうだね。頑張って」
「ありがとうございます、紗愛蘭先輩」
春歌ちゃんは深々とお辞儀をする。こういう姿を見るとつい一年前の自分と重ねたくなるが、ここまで礼儀正しくはなかった。それだけ春歌ちゃんがしっかりした子であるということだ。
「真裕たちはこのままライトにいる?」
「うん、そのつもりだよ」
「オッケー。じゃあ私はセンターに回るね」
「ありがとう」
紗愛蘭ちゃんがセンターに移動し、私と春歌ちゃんは二人でライトを守ることとなる。ホーム側では打者の準備が整い、バッティング練習が再開される。
「ライト!」
するといきなり打球が飛んできた。春歌ちゃんは飛球が上がったのと同時に一歩を踏み出し、素早く落下点に入る。
「オーライ」
力無く落ちてきたボールを、春歌ちゃんは難なくキャッチ。慣れたグラブ捌きをしており、安心して見ていられた。
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