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――新たな夏の訪れを待ち侘びる季節。窓から吹き込む長閑なそよ風に誘われ、私は目を覚ます。
「ふわあ……」
大きな欠伸をしながら背筋を伸ばし、ベッドから出た私は、部屋にあるスタンドミラーの前に立つ。一年前と比べて、幾らか背が高くなったのではないだろうか。これは明後日の身体測定が楽しみだ。
私の名前は柳瀬真裕。今日から高校二年生になる。別にどこにでもいる女子高生だと自分では思っているが、少しだけ珍しい部活動に所属している。
制服に身を包み、お気に入りの緑のヘアピンをしたら準備完了。髪は比較的短い方なので、毎朝整えるのにそこまで時間を要しない。私は一階へと降り、居間で朝食を摂ることにする。
「おはよう」
「あ、おはよう真裕」
食卓ではお母さんが仕事に行く前の化粧を整えていた。その隣では、皿に盛られたベーコンエッグと野菜が用意されている。私の分の朝食だろう。
「レンジの中にトースト焼いてあるから、朝はそれと一緒に食べて」
「はーい」
私はレンジからトースト、冷蔵庫からマーガリンを取り出し、机に腰かける。
「いただきます」
箸でベーコンを二つに裂き、白身を乗せて口に入れる。ほんのりとした胡椒の香りと優しい薄塩味。目覚めたばかりのやや重たい身体には、これくらいがちょうど良い。
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