202人が本棚に入れています
本棚に追加
「おお、真裕。おはよう」
「あ、お父さん。おはよう」
そこにスーツ姿で現れたのは私のお父さんだ。お父さんは私を見るや否や蒸かし芋のようにほっこりと顔を綻ばせ、頭を撫でようとする。
「ふふっ、二年生になって一層可愛くなったなあ」
「あーもう、止めてっててば!」
私はお父さんの手を叩くようにして払い除ける。昔からお父さんはこういうことをしてくるが、もう私も高校生。流石に恥ずかしいので、最近はこうして拒絶している。
「うーん……、今日も駄目かあ……」
お父さんはしょんぼりと肩を落とす。ちょっと口調が強すぎただろうか。別にお父さんが嫌いなわけではなく、私としてはこんなことで悲しい顔をしてほしくない。この辺りの距離感は、今少しだけ悩んでいるところだ。
「今日も駄目って、貴方はいつもタイミングが悪いの。真裕は食事中でしょ。そういうこと考えてないから嫌がられるの」
「うう……、その通りだよね……」
二人の間に気まずい空気が流れかけるも、お母さんがフォローを入れてくれる。お母さんは私の気持ちを理解してくれているようで、色々と助けられている。
「はいはい、分かったなら仕事行ってらっしゃい。今日も頑張ってね」
「うん、行ってきます」
少し元気を取り戻したお父さん。お母さんと出かける前のキスを交わす。
「む……」
見慣れた光景だが、この頃の私はふと目を逸らしてしまうことが多くなった。見ていると何だか心がもやもやするからだ。
最初のコメントを投稿しよう!