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「ごちそうさま」
お父さんが出ていった後はさっさと朝食を食べ終え、私は荷物の整理に取り掛かる。ボストンバッグに用具を詰めていると、今度は二階から誰かが降りてくる足音が聞こえてきた。お兄ちゃんが起きてきたみたいだ。
「あ、おはようお兄ちゃん」
「おう、おはよ」
寝癖の付いた頭を掻きながら、気怠そうな声で挨拶をするお兄ちゃん。名前は柳瀬飛翔。私より四つ年上で、今年で大学三年生になる。
「お兄ちゃん、まだ大学は休みなの?」
「ああ、明後日まで。今日は午後から練習」
お兄ちゃんは野球部に所属している。ポジションはピッチャー。高校の時に怪我を負って一度野球から離れていたものの、半年ほど前に復帰。現在は元気に活躍している。先日行われた春の大会でも強豪相手に好投し、チームを勝利へと導いた。
「午後練ってことは午前は暇なんだよね? じゃあ駅まで送ってってよ」
「えー、めんどくさ。何時?」
お兄ちゃんは嫌そうな顔をしながらも、すぐに私のお願いを了承してくれた。ぶっきらぼうな点も多いが、根は優しい。そんなお兄ちゃんが私は好きだ。
「京子ちゃん次第だけど、もうちょっとで出発するつもり」
「はいよ。とりあえず顔洗ってくるわ」
そう言ってお兄ちゃんが洗面所へと入っていく。それから十分後、支度を終えた私がリビングで待機していると、玄関のインターホンが鳴った。京子ちゃんが来たようだ。
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