思い出のクソ野郎

3/5
前へ
/5ページ
次へ
 その日から私の鼻の奥にあの匂いがこびりついた。もしや鼻毛に染みついているのではないか、わざわざ鼻毛カッターを購入し処理した。少しはましになるが、日に数度あの臭いが立ち上がってくる。  自分の体の中に臭いが住み着いたような気がして、週三回だったシャワーを毎日浴びるようになった。  あのとき着ていた服は捨てて、久しぶりに服を購入し、こまめに洗濯するようになった。    身なりなど構わなかったのに、人の嗅覚が気になり始めたのだ。    服だけでなく香水も買うようになると、今の安月給では厳しく生活もままならない。将来のことなど考えたこともなかったのだが、このままでやっていけるのかと不安になり始めた。  なにかいい方法はないものかと思案した。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加