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次の日の放課後。
音楽室へ行くと、珍しく彼はまだ来ていなかった。
昨日書いた交換日記の内容を彼が来るまでに書き直そうと、交換日記とペンを出した時、ちょうど彼が入ってきた。
慌ててそれらを後ろの机の上に置いて、自分の体で隠すと、彼は不思議そうな顔をしながらピアノを弾き始めた。
いつものようにピアノに聞き惚れ、音楽室を出て帰路に着くと、机の上に交換日記を置き忘れたことに気がついた。
サァっと顔が青ざめ、自分が書いたことを必死に思い出した。
あなたの才能が羨ましい
才能なんて、とても失礼な言葉だ。
努力、したに決まっているじゃない。
…他の人よりももっと。
彼に嫌われてしまうかもしれない。
そもそも私たちのこの関係は、どちらかが終わりを望めば直ぐに断ち切れるほどの、脆くて儚い関係なのだから。
明日、来てくれるだろうか。
彼のピアノの音色を頭の中で反芻しながら、深い眠りに落ちた。
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