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別れの曲
「沙耶、おはよう。」
「…おはよ」
沙耶に挨拶を続けていると、目は合わせてくれないが、普通に返事してくれるようになった。
喜びを噛み締めながら席に座ると、すぐにホームルームがはじまった。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴る否や、教室を飛び出した私は音楽室へと向かった。
音楽室に近づいても、あの音色は聞こえない。
扉を開けると、彼の姿も、日記もなかった。
幻滅されたのだ。無神経なことを書いたから。
もうあの音色を、そばで聞くことは許されないのだろうか。
私はその場にへたりと座り込み、何も出来ないでいた。
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