ご令嬢はパン屋を開店した

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7.お店での出来事 私はオーナー室から出るとお店に顔を出す。 すると恵子がこちらに寄ってくる。 「どうしたの? 恵子」 「綾子さんがすごく厳しいの、どうにかして」 「わかったわ」 私は母親の元へ向かうのだった。 「お母さん、恵子に厳しくしているって本当なの?」 「ええっ、そうね、本当よ」 「なんでそんな事をするの? まだ新人なのに」 「お仕事中の責任者は私でしょ」 「それはそうだけど、そこまでしなくてもいいじゃない」 「綾香は私に指図をするの?」 「ううん、しないよ」 「なら貴女はオーナーとしてのお仕事をしていなさい」 母親に言ってはみたものの、聞き入れてくれなさそうだった。 私は恵子の元に戻ることにした。 「恵子、ごめんなさいね、綾子さんがお仕事中の責任者だから」 「そ、そうなんだ……」 「恵子はつらいの? つらいならこのパン屋をやめてもいいよ」 「ううん、やめないよ」 「そっかぁ、でも、つらいならいつでも相談してね」 「はい」 すると母親がこちらにやってくる。 「恵子さん、何をさぼっているのよ、お客様がまだいるでしょ、ちゃんとお仕事して」 「は、はい」 恵子はお仕事に戻っていく。 今度は私の方に振り向く。 「綾香、恵子さんに何を言っていたの?」 「お母さんの指導が厳しいと相談されて」 「それでさっき言いにきたのね」 「そういうことね」 「貴女は甘いのよ、それじゃオーナー失格ね」 「そこまで言うの?」 「言います」 「ここのパン屋のオーナーは私よ」 「それは知っているよ」 「なら私の立場を考えてよ」 「そうね、大変かもしれないわ、でも仕事の責任者は私なの、 どんな事があっても厳しくさせて」 「それで恵子がやめたらどうするの? 責任取れるの?」 「そんな事をなんで私が責任取らないといけないのよ」 「………………」 私は黙ってしまった。 母親はこうなるとどうにもできない。 私はどうしようか迷っている。 「お母さん、もういいよ、解雇させてもらいます」 「職権乱用ね、感情にまかせたままするなんて」 「だって恵子に辞められると困るの、わかってよ」 「わかったわ、ここのパン屋をやめていいのね?」 「本当はやめないで欲しい」 「どっちなの? はっきりしなさい」 「やめないで、今の発言は取り消す」 「それでいいのよ、で、私にどうして欲しいの?」 「恵子の事をもう少し優しく指導してあげて、お願いします」 「わかったわ」 「お母さん、ありがとう」 「お仕事に戻るね」 母親はお仕事に戻る事にした。 私はオーナー室に戻る事にした。 「綾香ったら甘いのよ、本当に」 綾子は恵子の元へ行く。 「恵子さん、貴女、オーナーに私の事で相談したでしょ」 「は、はい、相談しました」 「貴女の事を思ってしてるのにそういう事をするのね」 「厳しいから」 「そんな事でどうするのよ、もうっ」 今はお客様は居ない。 綾子は何かを考えついた。 「恵子さん、こっちに来て」 恵子は綾子についていく。 「ここでいいわ」 「ここって……人気がない」 「恵子さん、貴女、綾香の事が大好きなんでしょ?」 「えっ? そんな事はありません」 「本当に?」 「はい」 綾子は恵子の制服を脱がした。 「な、何をするのですか、やめて」 「何その、パンツとブラジャーは」 「恥ずかしいよ、やめて」 「その格好で居なさいよ」 「どうしてこんな事をするの?」 「特に理由なんてないわ、じゃあね」 綾子は恵子の制服を持ってお店の中へ戻った。 「私何をしたっていうのよ」 恵子はとうとう泣きだしてしまった。 「こんな格好じゃお店に戻れないよ」 「それに人気がないっていってもお店に戻るとなれば通行人と会うし」 恵子はどうすればいいのかがわからないでいた。 このままいっそ何処かに行きたいという気分だった。 私はお店の中でお客様の対応におわれている。 「お母さんと恵子は上手くやっているかな」 私は様子を見るためにお店の中へ行く。 お店の中に入ると恵子が居ないことに気づいた。 「お母さん、恵子は?」 「ねぇ、前から思ってたけど、お仕事中にお母さんと呼ぶのやめて」 「う、うん」 「綾子、恵子はどこに行ったの?」 「さぁ、さぼってるんじゃないの」 「そんな事はないでしょ」 私はお店の外に出ると恵子を探す事にした。 辺りを見回しても恵子が居ない。 一体何処にいるのかな。 その時だった。 路地裏に誰かの姿が目に映った。 私はそこに向かうと恵子が居た。 「恵子、大丈夫?」 「綾香……」 恵子は私を見ると抱きついてきて泣きだしてしまった。 「どうしたの?」 「綾子さんにやられたの」 「そうなんだ」 「うん」 「それに制服は何処に?」 「綾子さんが持っていった」 「ここで待ってて、今替えの制服を持ってくるね」 私はお店に戻るとすぐに替えの制服を取り出す。 またお店を出て私は恵子の元へ行く。 そんな時だった。 綾子に呼び止められる。 「何処に行くの? オーナーさん」 「どうしたの? 綾子、様子が変だよ」 「どこも変じゃないよ」 「ならいいけど……」 「急いでいるからまた後でね」 「はい」 私は急いで恵子の元へ行く。 「はい、これ」 私は替えの制服を恵子に渡した。 恵子はすぐさま制服を着た。 「綾香、ありがとうね」 「ううん、気にしないで、お店に戻ろうね」 「はい」 私と恵子は一緒にパン屋へ戻る事にしたのだった。 「恵子、ちょっと後でオーナー室に来てね」 「うん、わかった」 まずは綾子とお話しないといけないわ。 「綾子、どういう事よ、恵子にあんな事をするなんて」 「何の事かな、わからない」 「恵子の制服を持ってお店に戻って来たよね」 「そうね、下着姿がお似合いだったわ」 「なんでそんな事をするの? パン屋を潰す気?」 「貴方もお馬鹿さんね」 「どういう事よ?」 「どうして日本一のパン屋になれたと思うの?」 「それは綾子と一緒に経営していたからでしょ」 「まだそう思っているのね」 「よくわからない」 「私がね、国内を回って貴女のパン屋を宣伝していたのよ」 「そうだったの……」 私はそんな事を初めて知った。 「私にもっと感謝しなさいよ」 「はい、ありがとうございます」 「でも、私がオーナーなの、それで恵子にした事は許されないよ」 「そんなのわかってるわ」 「ならなんでひどい事をするの」 「お母さんも綾香の事が大好きなの」 「えっ? そうなんだ」 「びっくりしたような顔をして」 「それはびっくりするよ」 「じゃあ、綾香は恵子と私をどっちをとるの?」 「そんな事できるわけないじゃない」 「私と恵子とお付き合いするの?」 「そ、そうね、そういう事になるわ」 「なら、もう恵子さんにはひどい事はしないと約束するわ」 「うん、ありがとう」 「じゃあ、お仕事に戻るね」 綾子はお仕事に戻っていった。 私はオーナー室に戻ると恵子が待っていた。 「恵子、待たせてごめんね」 「ううん、私も今来たばかりだから」 「じゃあ、中に入って」 私と恵子はオーナー室に入ると椅子に座る。 「さて、綾子からなんで恵子にひどい事をするのかを聞いたわ」 「はい」 「理由は私の事が大好きだって言われた」 「そうなの?」 「うん」 「それで恵子にひどい事をしてたみたいね」 「そうだったのですね」 「そういえば、私と綾子が親子っていうのは知ってるの?」 「えっ? 初めて聞きました」 「あれ? 面接の時に聞いてないの?」 「はい」 「そうだったのね」 「はい」 「私は綾子も恵子も大事な従業員だから捨てるなんて事はできない」 「はい」 「だから私は二人とも大切にします」 「それってつまり……」 「察している通りよ」 「わかりました」 「三人で仲良くパン屋を盛り立てていきましょう」 「はいっ!」 恵子はオーナー室を出るとお仕事に戻った。 営業時間がおしまいね。 私もお片づけの手伝いにいこう。 お店に出ると恵子と綾子が何か話している。 「二人とも何を話しているの?」 「綾子の事でお話していたの」 「なるほど」 「でも、ちゃんと仲直りと言うか仲良くしているからね」 「うん」 「綾子と恵子は何を話していたの?」 「綾香には内緒」 「わ、わかったわ、私は先に帰るね」 私は自宅に帰る事にしたのだった。 自宅に着くと私は自室に戻る。 ベッドの上に仰向けになると私は考える事にした。 それにしても恵子と母親の綾子が私の事を大好きとなると 接し方も変えないといけないわ。 明日からが別の意味で大変だわ。 明日に備えて寝ようかな。 明日はパン屋がお休みだった。 ゆっくりとしたいけど、できなさそうに感じる。
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