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学校で体育の時間、グランドを走っていて私は転んでケガをした。膝を擦りむいて血が滲んだ。傷口に砂がメリ込んでいたので、先生は
「がまんして!」
と、私の傷口を水道水で洗った。
「痛い!痛い・・・」
と私は思わず叫んだ。
「マイだって痛かったよ・・・」
妹が後ろに立っていた。あの時と同じように、赤紫に腫れあがった顔だった。
夏の蒸し暑い夜、私は眠れなくて何度も寝返りを打っていた。
「おねえちゃん。絵本読んで・・・これ読んで・・・」
いつの間にか妹は枕元に座っていた。妹の大好きな『おやゆび姫』の絵本を持っている。
「早く・・・早く読んで・・・」
妹は私の髪を引っ張って離さない。仕方がないので私は起き上がり、みんなが眠っているので小さな声で絵本を読み始めた。
「それはマイちゃんの絵本でしょ。やめなさい。こんな夜中に!」
お母さんが、大きな声で私を叱った。私は本を閉じようとした。ひんやりと冷たい妹の手が、私の手首をつかまえて離さない。
「だってマイちゃんが、この本読んでって言うんだもん!」
妹の手は、どんどん強い力で私の手首を締め付ける。
「マイちゃん。読んであげるから、手を離して!」
私は大きな声で絵本を読み続けた。最後まで読んだ時、妹はやっと手を離した。ひんやりとした冷たい手は、スーッと消えて、私の手首には紫色に内出血した痕が残っていた。
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