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目が覚めた時は病院だった。
『元史さん、起きて下さい』
朝日を浴びると、妻のそんな声が脳裏に浮かび目が覚める。
「おや。おはようございます、桐生さん。調子は如何ですか?」
・・・
彼女では、ない。落胆した想いと共に、自分が事故に遭って運ばれたという事実を思い出す。だが、その声と姿に、彼が昨日担当医だと告げた医者ではないと知れた。
「おはようございます。・・・登戸先生は、どうしたんですか?」
自分の担当医の名をどうにか思い出して口にすると、彼は思い出したように「ああ」と呟く。
「彼なら、先程容態が急変した患者さんのところに行っていますよ」
「はぁ」
いまいち要領を得ない彼の言葉に相槌を入れると、いきなり仕切りのカーテンが開いた。
「碧先生、何やってるんですか・・・」
息を切らせて現れた自分の担当医らしき男は、枕元に立つ医師を見て、呆れたように溜め息を吐いた。
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