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ー呉羽総合医療病院 救急救命センター
子供の頃、日曜の午後2時というと一番ホッとできる時間帯だった。大人になった今では、そんな思い出に浸る余裕もなく、ただひたすら走り回っている。
思えば遠くまできたものだ と、この春から研修を終え正式に救命センターに着任した救命医 登戸(のぼりと)は溜め息を吐いた。
たった今、息を引き取った少女は犬の散歩をしている際、わき見運転のトラックにはねられたという。どうにもやるせない現実に対する焦燥感と、救えなかったという悔しさに歯噛みすることしかできなかった。
「登戸君。その子の処置が終わったら、こちらをお願いします」
遺体を前に立ち尽くしていると、元指導医でもある同僚から声がかかる。
「あ、はい!」
慌てて気持ちを切り替えて彼の元へと歩を進めると、患者受け入れを知らせるサイレンが鳴った。
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