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『貝塚インター付近で、居眠り運転による衝突事故発生。三十代男性は意識がありませんが、骨折のみ。二十代女性は救急車の中で心音停止状態。只今、隊員が蘇生を続けています!』
・・・
「登戸君、こっちは私一人で大丈夫です。宮城(みやぎ)先生も向こうで処置に当たっていた筈なので、出迎えに行ってあげて下さい」
「あ、はい!」
そう言って、彼はこちらに目も向けず、患者の傷口の縫合を始める。目にも鮮やかな彼の手技を見ていたい気持ちもあったが、研修期間は三ヶ月前に終わりを迎えていた。
ちぇ
元々、彼は登戸の指導医ではなく、九ヶ月程前にアメリカのERから院長の姪の推薦でやってきた人だった。
そんな彼が指導医になったのは、本来の指導医である老医師が病院を辞めたせいではあるが、技術だけで言えば彼の方が上だ。そんな彼の治療に後ろ髪を引かれながらも、登戸は処置室を後にした。
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