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そもそもこの世界で女性が学校に通うことが出来るのか。公には男性しか魔術が使えないなら、魔術を学ぶとすれば女性には無縁なはず。一般的な教養を学ぶために、女性が活躍するための修学施設など作るものだろうか。
「私の知り合いの作った国はなかなか自由な風潮でね。男女の差別は特にないから普通に通えるよ。まあ、魔術を使える比率では圧倒的に男のが多いけどね」
つまりはヘリアンサスはエステルが通うことのできる学校を探してくれたのである。この年齢で同年代の人間と関わることなく生活させる事を不義に思ったのか。
「ヘリアンサスがわざわざ用意してくれたのなら行かないわけには行かないな」
ヘリアンサスが自分を手元から離そうとしている。しかしながらそれは彼女なりの愛情の現れなのだという事は分かっていた。エステルの更なる成長のため、本当は離れたくないが送り出す決心をしたということを。
「本当はもっと早くに送り出せたんだ……でも、私がお前と一緒にいたいから長引かせちまった。ごめんな……」
ヘリアンサスは泣き笑いでエステルを見つめる。
「分かってる。ヘリアンサスのことはなんだって分かってるよ」
エステルはヘリアンサスを抱きしめて頭を撫でた。
「行ってきます。お母さん」
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