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「僕の家、ここです。ここの五階です!」
「……おおー」
さて、俺はどこにいるでしょう。
正解は、瀬尾くんが住んでいるというマンションの前。瀬尾くん、見た目は日本家屋の玄関から飛び出してきそうな典型的な野球少年だから(それも偏見なのだが)、連れてこられた場所が、けっこう高級なマンションでびっくりしている。
比較的最近建った建物で、雄太と「なんかでけーマンション建つらしいね」とか、ちっちゃいころに噂していた建物だ。人生、どこで縁があるかわからないな。
で、どうしてここにいるのか、という話なのだが。
「えーと、ご両親はいるの? 俺、迷惑じゃない?」
「全然平気です! むしろ、呼んで〜、って、ママから言われたんです! お母さんはちょっと気難しいとこもあるけど、でも優しいから大丈夫です!」
「お、おう?」
ちょっと理解が追いつかなかったが、瀬尾くんは俺の腕を引っ張ってマンションに入ってしまった。ガラス扉を開いた先に、清掃員がこまめに入っているのだろう、清潔感のあるエントランス。瀬尾くんは待ちきれない様子で、オートロックまでぴゅーっと走ると、慣れた手つきで「504」を入力する。
『はーい。リュウ? おかえり~』
「ママただいま! 開けてー!」
『はいはい、開けるよ~』
「…………」
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