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どういうことかっていったら、そういうことでしかない。
知ってしまったんだ、雄太のせいで。時代は自由恋愛だっていうこと。俺が時代に追いつけないだけで、実は遙か昔から、みんな境界のない恋をしていたのだということ。
だから島田に説明するにも、ただただ「この子俺のことが好きでぇ~」と説明するしか無かった。他に方法が無かった。性別なんて記号に過ぎない。人と人とが好き合う中で、この子は俺のことを好きになってくれたのだ。
島田と、同じ理由で。
それを、庇いたくて。
庇いたくて、庇いたくて、なのに。
「賢治さん、行きましょうよ! 賢治さん……!」
「やめっ……! 待てって、柳之介!」
「ね、ねぇ、私、この子に嫌われてる?」
「嫌だ! この女の人やだよ、賢治さん!」
「――――っ!!」
一つだけ言わせて欲しい。
ここには、子供しかいなかった。それぞれが恋をしていて、自分の守りたいものを握りしめていて、それを、譲ることができなくて。
だから、俺は、大人げないんじゃなくて。
まだ、ろくに恋愛を経ていない、体が大きいだけの子供なのだということを。
その、情けなさを。
「――もう、やめろよ! 恥ずかしいんだよ!!」
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