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「あの、島田。違うんだ。本当に」
「違う、って……?」
「柳之介は、その、兄弟じゃなくて。親戚とか、そういうものでも……。友達なんだよ。いろいろあってつるんでて、それで、だから、弟、みたいなもんなんだけど」
心の中でマーブルになった、善意と悪意。そこから針の先で掬うみたいに善意を拾い上げて、なんとか一粒ずつ口にする。そんな、愚かな作業。
「だから」
だから?
「だから俺は……決して、あの。ああいうのじゃ、なくて」
ああいうの?
ああいうのって、どういうのだよ。男が男を好きになるってことか? それとも人前で、あんなことを叫んじゃうことか? 島田に柳之介が恋愛対象じゃないってことを伝えたいのか? 俺がこんな馬鹿なまねをするはずがないと言いたいのか?
そんなことを?
「……いや、佐原君、そうじゃないでしょ」
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