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「え?」
島田の表情は真剣だった。ぐずぐずの俺に怒っているようでもあった。わずかに困惑を残しながらも、キリッと瞳を引き締めて、鋭く俺を問い詰めた。
「行かなきゃだめでしょ! あの子泣いてたよ? 何があってこんなことになってるのか知らないけど、さっきの言い方は普通に良くない! ちゃんと謝りに行く!」
「え、ええ?」
「ええ、じゃない! このあたりよく不審者出るんだよ!? そんなところで小学生一人にしてどうするの! ねえ、もう橋のところまで行っちゃった! 追いかけなきゃ!!」
いろいろ言っているうちに島田の怒りも高まってきたようで、後半は普通に怒られていた。いや島田、お前が来たせいでこんなことになってんだろ! と一瞬脳裏をよぎったが、百個並べたって島田の正論には到底かなわない。
そして島田の正しさに鼓舞されて、俺の怠惰に潰されかけていた正義も、ようやく目を覚ましたのだ。
「あ、ああ」
「ほら行く! 早く行く! 謝る! 私も謝るから!」
「わ、わかった!」
島田は自転車を押してタッタと走り出し、俺もその横を伴走する。
一緒に謝ってくれるのか、と思いながら。
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