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4.
「付き合ってください!!」
…………ほう?
目の前で起きている事態を、俺は全く把握できなかった。
頭を深く下げる女子生徒。
放課後、ひと気のない廊下で。
「……えーと」
佐原賢治、高校三年生。今年で十八歳。
小学生の頃に一度告白された経験あり、中学校の時に親友の悪ノリに背中を押されて告白するも玉砕。一番青春華やぐと思われた高校生活では、まさかの恋愛話ゼロ。
……で、終わるかと、思っていたのだが。
「あの……俺で合ってる? 相手、間違ってない?」
「ま、間違ってなんかないよ!」
女子生徒は、とんでもない、と言わんばかりに、ぱっと顔を上げる。
「実は佐原君のこと、一年の時から気になってて……それで、そのっ、受験が本格的に始まる前に、気持ちを伝えておきたくって……って、思って」
そう髪を耳にかけながら言い訳をする様子は、照れているようでも、怒っているようでもあって。彼女の白くて小さな耳が、長い黒髪の中から露わになる。
ひぇっ、と、うぶな感性が悲鳴を上げた。
やばい、嬉しい。
嬉しい、けど。
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