知らないうちに居るアイツ

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そんなに遠くない動物園に着いて、柊はチケットを自動券売機で1枚だけ買う。 結局係員に見せなくてはいけないため、動物ファンではなさそうな若者が1人で来たのが珍しいのか珍獣を見るような顔で見られた。 その様子を横で紺に盛大に笑われてしまう。 「別にいいじゃねぇかよ、1人だって」 「そんな拗ねないでよ、一人じゃないんだから」 ふふっと笑う紺の笑顔が今度は眩しく見えて、柊はまたその笑顔に惹かれた。 入っていくと、早々に紺は鳥コーナーに滑り込んでいった。柊はパンダコーナーの人の数に目を見張りながら付いていく。 紺は熱心にフクロウを見て唸る。きっとさっきの鳥を探しているのだろう。 「あれってフクロウなの?」 「違うかも!」 「なんだそれ......」 それでも楽しそうに探してる紺に柊も自然と笑顔になった。 その後も広い上野動物園内を色々な動物を見ながら巡った。少しだけ柊の中で引っ掛かったままだった周りの視線も、久しぶりな動物園の意外な楽しさと紺と過ごした時間で気にならなくなった。 (コイツといるの、結構楽だし楽しいかも) 柊は、始め彼と関わったのは放って置けない一心のみからだったが、さらに彼といる理由を見つけ、少し嬉しくなる。 そう思った矢先だった。
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