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**3日後
柊はバイトに行っていた。
まえは探しに行ったけど結局見つからず。暑さにやられて二時間で切り上げた。
バイトは家の近くのスーパー。大学の友達には、高校生みたいだとからかわれたが、楽だし別に気にしてない。
その帰り道、視界にふらっと少年が映った気がした。
「おい」
思わず声をかけて、住宅路を走る。角を曲がったところに、1週間探した少年がいた。
「アオイ、やっと」
そういって引き寄せようとした。けれどもその手は何も掴まなかった。
「シュウじゃん、どうしたの?」
「どうしたのって、お前」
俺はお前を探してたんだ、と告げると、紺は驚いた表情をしてみせた。
「おれのこと?探してたの?」
「お前が、突然消えるからだろ」
あまりにもとぼける紺に少しいらだって柊は声を張り上げる。一瞬びくんと紺の肩が震えた気がした。
「あ、あぁ、あの時か。なんかあれからしばらくダメになっててね......でも今日は大丈夫だったから、ふらふらしてた」
頭をかきながら笑って誤魔化そうとする紺を柊は逃がさなかった。
「ダメって何だよ。お前は、何なんだよ」
今までにないくらい真剣な表情をした柊を見て、紺は愛想笑いをやめた。
「こんなところじゃ、シュウが通りがかった人に変な目で見られるよ。だから家行こ」
紺は柊の家の方向に歩き出した。柊も黙って後をついていく。
家につくまでお互い何も話さなかった。
けれど、柊は紺の表情を見て、自分の事情に触れてほしくないんだと何となく感じた。
それでも彼の姿がまた見れて安心したし、彼のことがずっと知りたかった柊は、気にしなかった。
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