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「幽霊とか、見えるの?」
「え?いや、まあ高速道路で男の子歩いてるのとかは見えるけど」
「すごいなぁ、それ見えちゃってるじゃん」
怖いのは見たくないね、と彼はあどけなく笑いながら腕を擦った。
ちょっと訳がわからない。柊は暑いのでここで立ち話をするのは嫌だった。
「...で?それがなんなんだよ」
「おれ、幽体離脱してんの」
ほら、触ってみ?と手をさしのべる。その手を掴もうとしたら、空を切った。
(わけわかんねぇ、なんだコイツ)
目の前、確実に触れる距離にいるものに触れない。物理的な障壁はないのに触れられない。見えているのに、そこには何もないかのようだった。
恐怖なのか、興味なのか、霊体特有の何かでも発しているのか。分からないが柊は少し涼しくなった。
上手く言葉に表せられなかった柊は、そのまま唖然としているのもみっともないとおもい、駅への道を歩きだした。
「あ、ちょっと、もう少し話そうよ」
こういうのに関わったらまた面倒なことになる、ましてや霊体だなんて──と自分の中でアラートが鳴る。きっとここで、何か反論を言えば彼は着いてこないだろう。でも──
「...好きにしろよ」
モゴモゴと変な表情になって、柊は少し足を速めた。話しても良い、と解釈した幽体離脱少年も、嬉しそうに笑いながら足音なくその後に付いて駆けた。
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