1日目:ジェヌ先輩の言葉

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1日目:ジェヌ先輩の言葉

大きなため息を吐いて真夜中の駅のベンチに腰掛ける ふと、お腹が空いてホットメニューの自動販売機に目をやる 自動販売機の前まで行き財布を開くとお金が足りない 電車に乗るために電子マネーにチャージしたせいだ 切符にしとけばよかったと思いながら 近くにあったアイスの自動販売機でショコラアイスを買う ポケットにあったクッキーとリュックに入っていたジュースを飲みつつ 乗り損ねた電車を見送りながら 一緒に居た劇団の先輩の言っていたことを思い出す 「その役新人に与える役じゃないよ」 「古株はイライラしてるからね」 「私よりあの人の方が役多いとかさー」 自分へ言われた事が少なかったとは言えども 怒られている気分になるものである 確かに今回自分の貰った役はとても良い役だ 俗に言うメインキャストというやつだ 貰った当初は大喜びしたし今もとても嬉しい しかし、去年貰った役がワンシーンしか無かった故に 今年はキャパオーバーになっているところがある そこに「あなたの役は新人に与える役じゃないよ」と言われると やはり心に来るものがある 自分の実力が全然足りないところも まだまだ考えが甘いところも今すごく悩んでるとこだ そう思われても仕方ないのかもしれない ただ、いつも一緒に居る先輩…キオさんは 役を貰った時はおめでとうと言ってくれたし キャパオーバーになった時も支えてくれていたもので 今日一緒に居た先輩…ジェヌさんの言葉は心に重く響いた キオさんもジェヌさんも僕に愚痴を吐くが どうにも聞いた後の気分に差がある キオさんの愚痴はどうとも思わないのに ジェヌさんの愚痴はどうにも心が重くなるのだ まるで自分に言われてるかのような気分だ 急に自分の目の前に捨てられたゴミをゴミ箱に放り投げて ガヤガヤと騒がしい電車に乗り込んだ 明日はキオさん来るかなぁ…
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