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予告編
「やめて……!」
彼女の声が聞こえる。
正直その男たちの前に立ちはだかるのは怖かったけれど、俺はその道を選んだ。
「やめろ! あいつが何をしたってんだ!」
にらまれる。
超怖い。
それでも、ここで行かせたら二度とこの店が開くことはない気がした。そして、ずっと当たり前のように会っていた、幼馴染に二度と会えなくなるような気がしたのだ。
だから、ここで行かせるくらいなら死んだ方がましだ。
銃を向けられる。
死んだ……俺。
「待て」
そんな弱い俺を見たスキンヘッドの筋肉で体が太い男が口を開いた。
「小僧、気に入った。名前は?」
「蒼井利家」
「そうか、蒼井くんと呼ばせてもらおう。銃を向けられてなおひるまねえとはな。いいぜ、お前に免じて、俺の権力を使って少し得るのは待とうじゃないか」
「本当か!」
「ただし、条件がある」
「俺はマネーワールドっていうオンラインゲームがお気に入りでね。ゲーム内で稼いだ金は、現実に持ち帰れる。お前さんにはそこで一千万稼いでもらう。起源は3か月以内だぁ。どうだ。この勝負、受けるか?」
「当たり前だ。この店はあの家族の努力の結晶で、俺にとっても大切な人生の一部だ。守るためなら、そのくらいしてやる」
「はははははは! いいぜ小僧。その意気がどこまで続くかが楽しみだぁ!」
「だがな、小僧。マネーワールドはそう生半可なゲームじゃないぜ?」
マネーワールド。
それは自身の脳とゲーム世界のキャラクターをリンクさせ、自分がゲームの世界に入ったかのように遊ぶことができるRPGゲーム。
世界観は、よくあるファンタジーものだけれど、決定的に違う点がいくつかある。
この世界では人の命よりお金が優先される。なぜなら、この世界に来た人間は全員が金を必要としている者たち。故に、競い合い、殺し合い、他の人間を貶めて稼ぐことも厭わない。
この世界でHPが一度でも0になればステータスがすべてリセットされる。死ねばそこまで、溜めた金も財産もすべてが消えゆく。
この世界での魔法は、すべて魔法が封じられた高価な石で行う。故に、魔法を使うのにも金が要る。
このゲームは徹底して、生きるだけで金を奪われる構造になっている。
そんな中で、金を稼がなければならないのだ。
「死ね。ルーキー」
「剣を教えてやる。だから俺に見せてくれ。ここから脱出できたお前の姿を」
「この奈落の迷宮を抜け出せるのは初心者の中でもごくわずかだけ。それ以外は金も稼げないまま、死ぬしかない」
「マネーワールドでは、九割の人間が金を搾取され死にゆく運命の敗者となる。お前は、そんな敗北者にならずに済むかな?」
「そうだ、怒れ怒れぇ! お前は怒れば怒るほど、血沸き肉躍る戦いが楽しめるぅ!」
利家は生きる。
ゲームの世界で。戦いの世界で。
背中には鋼の剣を一本背負い、たったHPが3しかない中で、多くの試練に勝ち、一千万を幼馴染に届けるまで。
死なないために、金を稼ぐために戦い続ける。
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