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甘味な毒(Ⅱ)
夏季の課題を基に行われた期末試験。
教師により採点された解答用紙が今現在手元に返ってきた。
毎度の事ながら、一応採点だけをちらっと見る。確認すると解答用紙を手でくしゃくしゃに丸めて、机の中に入れた。
自分が馬鹿だと自覚のある明久は、『自分の力じゃ答えられない質問が嫌い』だった。
誰も居ない教室にナル先輩と2人で床に座り込んだ。今日はナル先輩の方が早く教室に居たものだから、驚いた。
夏が過ぎても、制服は夏服のままで日陰の方だから教室は涼しい。
小窓を開けて涼しんでいるナル先輩。天然のパーマであるナル先輩の髪が何度も靡いた。
「今日、佐々木のテスト、返ってきたんだろ? どうだったんだ」
明久が教室に入り、ドアを閉めようとした。急にナル先輩がめちゃくちゃ意地悪な質問をしてきた。
佐々木は、今日返されたテストの教科担当だ。
数学が教科で、テストを返してもらう。その為に授業を受けたものの、明久が授業に出た事を嬉しく感じたっぽい。笑顔で数学の問題を明久に当ててくる。
そんな教師について、背後から聞こえるナル先輩の声は甘ったるく軽やかだ。
「何でナル先輩が知ってるんすか・・・・・・」
今日、返ってくる事を知っているのが、不思議でしょうがない。
ナル先輩の目を見つめて、右の口角を上げ苦そうな顔立ちをした。
「何故でしょう」
明久の表情で勘ぐったナル先輩は、自分自身が言った言葉で、図星を突かれたよう顔をする明久に面白がった。再び意地悪な話し方をする。
この先輩の情報量は半端ないな、敵に回したら怖そうだ。
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