3.外出

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3.外出

ここで2日を過ごした亮介はすっかり義理の母の家を我が物顔で走り回るようになっていた。 「ママ〜、おもちゃが失くなってる」 亮介は先程から妻に何度も訴える。 「黄色いブロックがないよ」 「お片付けしないから失くなったんでしょ、縁側に広げっぱなしで」 亮介は妻から思わぬ反撃を受けて黙り込んだ。 修太郎も縁側の周りを探してみたが、確かに黄色の三角形のブロックはどこにも見つからない。 「あの入り口から違う世界に行っちゃったんだよ、ほら今は猫もあの場所にいないだろう」 修太郎はのんきにそんなことを言ってみたが、亮介はこわごわと庭石を見ていた。 午後の散歩に出掛けているのか、確かに猫はあの場所にはいなかった。 「これからはちゃんと遊んだ後はお片付けするのよ」 妻の小言から逃げるように亮介は修太郎に絡みついた。 義理の母が亮介と修太郎を気遣って、買い物に出掛けようと誘う。 「修太郎さんはゆっくりしていてええわよ、のんびりしといてねえ」 大きな家に修太郎を一人残して、義理の母と妻と亮介は外出していった。 「お言葉に甘えてゆっくりさせてもらいますか」 修太郎は独り言を言いながら台所からビールとつまみになりそうなものを取り出して縁側に戻ってきた。 庭に出ると大きな伸びをして、広々とした青空を抱きしめたくなった。 こんな自然豊かな中で飲む休日のビールほどうまいものはない。 修太郎は猫のいない庭石の前の地べたを触ってみた。 不思議なくらい猫の眠っていた場所だけがひんやりとしている。 猫は快適な場所をちゃんと知っているんだなと感心しながら、縁側に戻り一人きりの晩酌の続きを楽しんだ。
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