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風が止まっていた。
ぬけるような青空から、刺すような陽射しが肌をじりじり焼く。
オーブンに放り込まれたみたいだ。
昼過ぎ。千葉県松戸の霊園に着いてからも同じで、そよともしない。
波のないしんとした、静かな湖のような海を、男は想像した。
噴きだす汗を拭いながら、男は、ペットボトルの水を飲み干す。
昨日までがお盆だった。
今日は八月十六日で、お盆の翌日だ。
お盆には霊が帰ってくるという。
彼女の霊に帰って来られても、ぞっとしない。
ただ、墓参りぐらいしとかないと、一年間毎朝、寝覚めが悪い。
だから男は意を決して、自分が殺した女の墓参りに、初めてきた。
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