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まあ、成功……かな?
「なんとか間に合ったみたいだね」
俺は部長に資料作成と添削が終わったことを報告していた。
「確かにミスは多かったですけど、柊さんの力を借りなくても間に合いましたよ」
「俺が代わりに添削をしたからね。だが、今後は柊君を通してからにしてくれ。今回は大きな仕事だったから添削をしたが、毎回は出来ないぞ」
俺は「すいませんでした」と頭を下げてデスクへと戻った。すると、久ヶ原が声をかけてくる。
「坂井君、これ柊さんから」
渡されたのは冷やされた缶コーヒーとメモ用紙。だけど、俺は疑問を覚えた。
「柊さんって今日は休みじゃなかったっけ?」
「今日中に仕上がるだろうから渡しておいてほしいって言われてたの」
俺はメモ用紙を見てみる。そこに書かれていたのは謝罪だった。
『坂井、お前一人に任せるような形になってすまなかった』
俺はそのメモをとりあえずデスクの上に貼り、冷えた缶コーヒーを一気に飲み干した。そして俺は空き缶を握りつぶしてぼやく。
「これだけの大仕事を終わらせても労いは缶コーヒーだけか。どんだけケチなんだか」
「会社の上司に何を求めてんのよ。坂井君、お昼は毎回コンビニ弁当だし、ご飯とか誘いにくいんじゃないの?」
久ヶ原の意見に俺は何も返せなかった。
まあ、そもそも柊さんが感情表現とかが苦手で飯とかに誘うタイプじゃないのは分かってるけど。
その後、俺は取引先の会社へと向かい、資料を渡した。
中身すら確認もせずに。
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