俺の問題? そんなはず……。

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俺の問題? そんなはず……。

「順調に進んでいるようだね」  企画の担当になってから数週間。俺は部長に進捗状況を伝えていた。 「商談とか初めてですけど、なんとかなってます。もう少しで契約の話になるかもしれません」  商談は順調そのもの。契約の話も取引先から出た。この取引が成立すればボーナスとかも出ることだろう。  だけど、部長は「君には一つ直してほしい事があるんだけどね」とか言ってきた。 「坂井君、君は確かに仕事は早い。だが、粗も多いんだ。細かいミスがね。その辺りを直してくれるとありがたいんだけどな」 「え、そんなにミスあります? 俺、一応見直しはしてるんですけど」 「文書なら脱字。数式なら入力ミスによる計算間違い。大抵は柊君がカバーしているみたいだけど、毎回それじゃあ少し困るからね」  柊さんの名前が出てきて俺は「どうして柊さんが出てくるんです?」と口にしてしまう。  部長は肩をすくめながら「それは君の上司だからだろう?」とさも当然のように言ってきた。  俺が不服そうにしていると「もしかして知らないのかい?」と部長は訊いてくる。 「普段から坂井君のミスは柊君が全て修正しているらしい。残業をしているのはそれが理由らしいぞ?」  俺は耳を疑った。だけど、同時に怒りがこみ上げる。前に業績が出せるはずだとか言ったくせに、ミスの指摘もしてくれないのか。  第一、急かされれば誰だってミスの一つや二つはするもんだろう。だから俺は部長に言い放った。 「ミスがなければ良いんですよね? じゃあ、見直す時間を増やします。柊さんに頼らなくても俺はできますよ」  部長は困った顔をするだけで何も言ってはくれなかった。俺は「失礼します」と頭を下げてデスクに戻る。  部長の席の前でこのやりとりをしたから、同僚はざわついていた。だけど、肝心の柊さんは無表情のままパソコンに向かっている。  なるほどね。残業しても評価が落ちないのにはこんな裏があったのか。
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