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「占い師ってそんな事までわかるのかよ?」
私はゴソゴソと鞄を漁り、中から財布を取り出した。そしてカード用のポケットから一枚の名刺を抜き取る。
「最近巷で噂になってる占い師ですよ。聞いた事ありません?」
「知らないな……。女子なら知ってんのかな?」
(女子とあまり喋らないんだ……)
「何ニヤついてんだよ? ……あ」
渡された名刺の裏面を見て先輩は驚いていた。『上地尚親』とボールペンで書かれていたからだ。
「その名刺のショウさんが書いてくれたんです。前世占いって言ってもタロット占いで、人より詳しく前世が見えちゃうだけなんだとかで……」
そう説明すると、先輩は名刺を表にしたり裏にしたりしながら、暫く黙り込んでしまった。先程とは打って変わった真剣な眼差しで、それが余計に、私の不安を煽った。
先輩はもう一度名刺を表にすると、スマホを取り出して電話をかけ始めた。
「ちっ。出ないな」
「先輩も占って欲しいんですか?」
「そうじゃないけど、前世の名前までわかるコイツなら、俺達がここで資料探すより有力な情報教えてくれるんじゃないのか?」
「あ……」
(そんなこと、思いつきもしなかった……)
てっきり先輩に馬鹿にされるかと思ったが、そんな私にはお構いなしに、先輩は何度かショウさんの電話にかけ直していた。しかし先輩の電話にショウさんが出る気配は無い。占い相手も口コミだけにしていたくらいだ。恐らく非通知や知らない番号からの電話は、出ないようにしているのだろう。それに気づいた先輩は、諦めてやっと私の方へ向き直った。
「直緒、このショウって占い師にはどうやったら会えるんだ?」
* * *
その日の夜、私はショウさんにメールを送った。
『響介先輩がショウさんに会いたいと言っているのですが、どうでしょうか?もし会って貰えるなら、日時を教えてください。』
すると、返事はメールではなく電話で返ってきた。
「直緒さん、久しぶり」
「お久しぶりです」
「この『響介先輩』って、この前話してた浅井って先輩?」
「え? あ、そうです。下の名前で呼べってうるさくて……」
「……」
「それであの……、お忙しいとは思うんですけど……」
「会うよ。俺も一度、彼と話をしたかったしね。今度の土曜、午前10時にアルカナで会おう」
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