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5.打ち切られた捜査
『連絡しなくて悪かった。今日の昼休み、図書室で会えるか?』
先輩からの返信が来たのは、翌々日の朝だった。
アルカナを出た後、近くのショップで服を見て時間を潰し、占いが終わる頃合を見計らってメールをした。そして駅の改札で先輩が現れるのを待っていたが、現れるどころかメールの返信すら一向に返って来なかった。
三十分程が過ぎ、さすがに遅過ぎだろうと先輩に電話をかけようとしたその時、目の前にショウさんが現れた。
「直緒さん、彼なら多分暫く来ないよ」
「え?」
「占いの内容にショックを受けたみたいだ。今は一人にしてあげた方がいいかもしれない。連絡がつかなければ、直緒さんは先に帰宅していいと思う」
そう説明するとショウさんは、「それじゃあ」と言って駅ビルの商業施設に消えて行った。これから占いの仕事をする予定なのだろう。
とりあえず私は先輩に連絡を取ろうとしたが、呼び出し音の後、「圏外か電源を切っている」というアナウンスが流れ、その後も連絡は取れなかった。
どんな結果にショックを受けたのだろうか。アルカナへ向かおうかとも考えたが、ショウさんの言う通り今は時間を置いた方がいいような気がして、一人で改札を通った。
家に帰ってからも返事や連絡は一切無く、翌日になってもそれは続いた。
このところ先輩に振り回される事に慣れ過ぎていて、いざ放置されてみると、余計に彼のことが気になってしょうがなかった。そんな不安な週末を終え、月曜の朝にやっと先輩からの返事が来た時には、心底ホッとしてしまった。
昼休み。いつもより早めに弁当を食べ終わり図書室へ直行すると、先輩と初めて会った時同様、昼休みの図書室は閑散としていたが、それでも数人がテーブル席で勉強したり本を読んだりしていた。その中に先輩の姿が見当たらなかったので、何となく初めて出会った郷土資料の棚へ向かってみる。すると、棚に辿り着いた辺りでポケットのスマホがバイブレーションした。
『あの棚のところに今いる』
そうメールを読んだところで、目の前には棚を背にしてスマホ画面を弄っている、先輩の姿があった。
「よう。早かったな」
「先輩こそ」
何となくいつもより元気が無いような気がして、思わず訊きたかった事を飲み込む。先輩の隣に近寄って、同じように棚を背にして寄りかかってみた。
「連絡、遅くなって悪かったな」
「いえ……」
「直緒のメールに気付いたの、翌朝だったわ」
「えっ?」
気づいたのも遅いが、返事を一日置いたのが気になった。先輩はずっと一点を見つめていて、私の方を見ようともしない。何だか嫌な予感がする。
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