81人が本棚に入れています
本棚に追加
/171ページ
「リンジー……。
どうしてそんな……」
チェスターはそうつぶやき、足早にリンジーに歩み寄った。
一方でリンジーは右手で口元の血を拭い、ゆっくりと立ち上がった。
「つまらないとこを見せちまったな。
だが、ちゃんと見ておくがいい、チェスター。
これがミルド族の異能力者の末路だ」
「異能力者の末路?
それって、いったい……」
「ジュナールの死神、イシュメルはオレに異能の力を与えると同時に、オレの体に呪いをかけた。
服従の洗礼を受けた異能力者は短命だ。
呪われたオレの体は、体の中から朽ちていく」
「そんな……。
それじゃ、リンジーは……」
「悲しい顔をするな、チェスター。
初めからわかっていたことだ。
オレは長く生きられない」
あんなに圧倒的な強さを誇っていたリンジーの体が朽ち始めているという事実にチェスターは驚いていた。
リンジーはまだ二十歳で、普通ならあと何十年も生きられるそれなのに……。
「チェスター・ロー。
オレがお前に剣を教えた理由を教えてやる」
リンジーはそう言って、鋭い目をチェスターに向けた。
チェスターは初めて聞くリンジーの思いを、息を殺しながら待っていた。
最初のコメントを投稿しよう!