呪われた体に秘めた思い

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「リンジー……。 どうしてそんな……」 チェスターはそうつぶやき、足早にリンジーに歩み寄った。 一方でリンジーは右手で口元の血を拭い、ゆっくりと立ち上がった。 「つまらないとこを見せちまったな。 だが、ちゃんと見ておくがいい、チェスター。 これがミルド族の異能力者の末路だ」 「異能力者の末路? それって、いったい……」 「ジュナールの死神、イシュメルはオレに異能の力を与えると同時に、オレの体に呪いをかけた。 服従の洗礼を受けた異能力者は短命だ。 呪われたオレの体は、体の中から朽ちていく」 「そんな……。 それじゃ、リンジーは……」 「悲しい顔をするな、チェスター。 初めからわかっていたことだ。 オレは長く生きられない」 あんなに圧倒的な強さを誇っていたリンジーの体が朽ち始めているという事実にチェスターは驚いていた。 リンジーはまだ二十歳で、普通ならあと何十年も生きられるそれなのに……。 「チェスター・ロー。 オレがお前に剣を教えた理由を教えてやる」 リンジーはそう言って、鋭い目をチェスターに向けた。 チェスターは初めて聞くリンジーの思いを、息を殺しながら待っていた。
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